丹後旅の宿 万助楼 竜宮波  Kinki/Kyoto

丹後旅の宿 万助楼

竜宮波Add

Kinki/Kyoto

古代檜の湯と、百八十度の日本海

館の角に置かれた和洋室。畳の間にシングルベッドを二台据え、窓辺に浅茂川浦島温泉を引いた古代檜の風呂を備える。定員は2名から4名、全室禁煙。

浦島伝説の浜に立つ百十余年

浦島伝説の浜に立つ百十余年

 京丹後・網野町浅茂川。漁港と磯場と砂浜、三方を海に囲まれた浜に、万助楼は百十余年のあいだ立っている。
 創業は明治四十年。漁師だった大町乙松が日本海で獲った魚を村の人々に振る舞い、食事処を開いたのが始まりだという。浅茂川漁港は当時、城崎や間人と船で結ばれた丹後の出入り口であり、避難港にも指定されていた。海が荒れた日に船を降りた人々を泊めたことから、明治四十五年に宿屋となった。以来、家族四代。
 階段をのぼった先、純和風の玄関が竜宮城への入り口になる。畳敷きの廊下を進むと、奥には朱色に染まった竜宮楼閣がひらける。浦島伝説の伝わる町の記憶を、平成十年に館の設えへ写したものだ。宿の目の前には、水江浦嶋子を祀る島児神社がある。
 昭和五年の五月には与謝野鉄幹・晶子がこの地を訪れ、館の前から望む入り日を詠んだと伝えられる。福島と恵比寿山のあいだに落ちる夕日は、今も変わらずそこにある。
 つかず離れず。女将が心がけるという距離が、この宿の温度である。

畳の間にベッドを据えた和洋室

畳の間にベッドを据えた和洋室

 「竜宮波(りゅうぐうは)」は、館の角に置かれた和洋室である。
 角部屋ゆえ日本海の眺めは百八十度。漁港、磯場、砂浜と、三方の海がそのまま視界に入る。季節や雲の変化がつくる風景に同じものはない、と宿は書く。
 畳の間にはシングルベッドが二台。腰を下ろしても、寝転んでもよい和洋の設えで、定員は二名から四名。冷蔵庫と金庫、トイレを備え、全室禁煙である。
 この部屋の主役は、窓辺の古代檜の風呂だろう。浦島温泉を引いた湯に浸かりながら、海と同じ高さで夕暮れを待つことができる。
 浴衣と半天、タオル、歯ブラシ、髭剃り、ドライヤーまで一式が揃う。荷を減らし、身ひとつで海へ向かえばよい。
 夜が降りると、沖に漁火がともる。窓の外は、しばらくそれだけになる。
 朝は障子越しの淡い光ではなく、窓いっぱいの明るさで目が覚めるだろう。海へ正面から開いた角部屋とは、そういう部屋である。

客室の檜風呂と、館の展望湯

客室の檜風呂と、館の展望湯

 竜宮波には古代檜の温泉風呂がある。浅茂川浦島温泉を引いた湯で、窓の先には日本海。人目を気にせず、好きな時刻に肩まで沈むことができる。
 湯はアルカリ性単純温泉。加温して満たされる、やわらかな湯である。
 館の大浴場は男湯「浦島湯」、女湯「乙姫湯」。内湯から日本海を一望でき、窓を開ければ潮風が入り込む。部屋の湯で夕日を見送り、朝は大浴場で水平線を眺める、という順序もいいだろう。
 浴槽は檜。湯が木肌に触れる音と、窓の外の波の音だけが部屋を満たす。
 館内はフロントから客室まで畳敷きの廊下が続く。素足のまま歩いても、足裏に冷たさは残らない。
 夜は漁火、朝は白む海。湯に身を預けたまま、外の時間だけが移っていく。

丹後の海と山と畑を、一皿に

丹後の海と山と畑を、一皿に

 朝、目の前の浅茂川漁港でセリに立つ。その日に何が揚がったかを見てから献立を決める。板長の一日はそこから始まる。
 館の前は漁港と磯場と砂浜。一年を通して魚種が豊富で、鰆、岩牡蠣、鳥貝、のどぐろ、寒鰤と季節ごとに主役が替わる。京都府は鰆の漁獲量が日本一だという。冬は松葉蟹。漁の解禁は十一月から三月までと短く、間人蟹や津居山蟹といった希少な活け蟹を朝競りで買い付け、かに懐石に仕立てる。
 野菜は万助農園から、必要なぶんだけを畑で収穫する。魚、野菜、米、味噌、牛肉まで丹後産という一貫は、この土地に立つ宿だからできることだろう。
 夕食は広間で、一品ずつ運ばれる。所要は一時間半から二時間。急がせない構成である。
 朝食は「丹後のおばんざい」。海草と野菜を中心に、丹後の食習慣をそのまま膳へ移す。名物は卵かけご飯で、殻の硬い地卵に、酒粕・燻製・梅鰹・山椒・カニと季節で替わる三種の醤油を合わせる。華やかではないが、滋味が深い。

 角部屋の窓に広がる百八十度の日本海と、窓辺の古代檜の温泉風呂。畳の間にベッドを据えた和洋室で、夕日から漁火へ移る時間を、ひとりぶんの湯から眺められる。

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photo

  • 浅茂川の浜に立つ万助楼の外観

  • 竜宮城への入り口となる純和風の玄関

  • 湯口から注ぐ浅茂川浦島温泉

  • 冬の主役、丹後のかに料理

  • 海草と野菜が中心の「丹後のおばんざい」

  • 館から望む、乙姫と出会ったと伝わる福島

detail

部屋タイプ 和洋室(古代檜の温泉風呂付)
定員 2名〜4名
ベッド シングル2台
客室設備 お風呂(古代檜風呂)・トイレ・冷蔵庫・金庫
アメニティ 浴衣・半天・タオル・バスタオル・歯ブラシ・シャンプー・コンディショナー・シャワーキャップ・綿棒・髭剃り・ドライヤー
禁煙・喫煙 全室禁煙
チェックイン/アウト 15:00/10:00

温泉

源泉名 浅茂川浦島温泉
泉質 アルカリ性単純温泉(加温式)
浴場 男湯「浦島湯」/女湯「乙姫湯」(内湯から日本海を望む)

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〒629-3104 Kyoto京丹後市網野町浅茂川366

【お車】京都縦貫自動車道「綾部JCT」より約1時間。京都縦貫道経由・山陰近畿道「京丹後大宮IC」利用が便利。
【電車】京都丹後鉄道・網野駅から車で約10分。網野駅まで無料送迎あり(要予約)。
【バス】冬のかにシーズン(12月〜翌3月)は大阪から網野への直行バスの運行あり(予約は各バス会社へ)。

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