日本屈指の名湯・有馬温泉と1400坪にわずか10室の贅沢なもてなし

　日本書紀にも記された日本三古湯のひとつと言われ、江戸時代の温泉番付では最高位である西の大関に格付けられた由緒ある兵庫県の名湯・有馬温泉。
　人気の神戸市にあるが、場所は六甲山北側の紅葉谷の麓に位置した標高350 500mの自然豊かな温泉街で、林羅山の日本三名泉や枕草子の三名泉にも数えられ、太閤秀吉が愛した温泉は今でも７つの源泉から豊富に涌き出ている。
　公共の外湯である「金の湯」（金泉）と「銀の湯」（銀泉）は有名で、日本でも屈指の湯量と効能を誇っている。
　火山のない場所に湧く温泉は、地下60kmのマントル近くの海洋プレート最端部から湧き出ているというから世界でも稀な温泉というほかなく、茶褐色の含鉄塩泉の塩分濃度は日本最高レベルといわれ、温泉好きにはたまらない。
　そんな大自然に抱かれた有馬の中でもとりわけ緑深い鼓ケ滝に向かう滝道沿いの閑静な別荘跡地に「有馬山叢　御所別墅（ありまさんそう　ごしょべっしょ）」が佇む。
　重厚で温かみのある門をくぐると石畳の先にフロントロビー棟が見えてきた。
　なんとも味のあるエントランスの書画は無方庵の号をもつ綿貫宏介氏のデザインで、館内すべての書画がコーディネイトされているそうだ。
　天井のない開放的なラウンジは大理石の床と重厚な柱の雰囲気が心地よく、フロントには立ち寄ることなくソファで寛ぎながら緑を眺め、お茶と季節の和菓子を味わいながらチェックインを済ませることができた。
　広大な敷地は1400坪もあり、その中にわずか10室だけの離れのスイートルームが点在する造りで、客室のすべてに温熱リラクゼーションが楽しめるサーマルルームを設えたというのだから、贅沢この上ない。

日本屈指の有馬温泉「金泉」で心身を解き放つ

　日本屈指の名湯といわれる有馬温泉に来ているのだから、温泉は大浴場で存分に愉しんでおきたい。
　温泉棟にある御所別墅離れの大浴場「有馬山叢　陶泉」は淡褐色の温泉が贅沢に溢れ、効能は含鉄ナトリウムと強塩泉の混合泉でじんわりと身体が温まる効能はさすがである。
　こじんまりとした雰囲気の中に静かな趣が溢れているこの浴場は、かつて有馬の温泉浴場だった「一ノ湯二ノ湯」の湯殿と御所坊が渡り廊下で繋がっていたという由縁があり、明治以前の有馬の象徴であった湯殿を偲んで設えられたと聞き、心が温まる。
　また御所別墅から徒歩8分ほどの御所坊内の半露天・半混浴という「金郷泉」には褐色の金泉が掛け流しで注がれ、旅の疲れを癒やしてくれる。
　半混浴とは一つの空間を男女で楽しんでほしいという思いから生まれた設えで、家族で顔を合わせながら楽しむ濁り湯は格別だ。