絶景!海が見える露天風呂の宿

絶景!海が見える露天風呂の宿

 日本にはたくさんの“絶景宿”がある。
 絶景とは山でもいいし、空でもいいし、宝石のような夜景をうたうホテルもある。
 だが、大概の雑誌などで特集される絶景宿の景観として最初に取り上げられがちなのは、やはり海が多いのではないだろうか。
 海や温泉(水)を象徴する“青色”の心理効果は気持ちを落ち着かせるものだから、人は無意識に生命の源の水を求めて旅するのだろうか。
 今回は、絶景の中でも特に海が見えて露天風呂にも浸かれる宿にスポットを当ててご紹介しよう。

海が見える露天風呂の魅力について

刻一刻と変わる「海の表情」

        

 海沿いの宿を予約して、まず何を求めるかと言えば爽快感溢れるオーシャンビューに他ならない。
 ロビーフロントで、或いは客室から、窓から見下ろせば手が届きそうな美しい海の景観は客人にとってこの上ない悦びと癒しをもたらすのだ。
 そして、はやる気持ちを抑えて向かった露天風呂からの景観は言わずもがなだが、大いなる海原の雄大さに加えてぜひ感じていただきたいのが、刻一刻と移ろいゆく海の表情。
 紺碧の波間に浮かぶ緑の島々であり、水平線を茜に染め上げる夕陽であり、さらに漆黒の闇に灯る漁船の幻想的な漁り火など、それは海が見える露天風呂だからこそ客人にもたらされる絶景なのだ。

遮るものが何も無い「圧倒的な開放感」

        

 “海が見える露天風呂”と一口に言ってもどの程度海が見えるのかは客人にとって最大の重用ポイントであり、どうせなら目前に遮るものが何一つ無く圧倒的な開放感を手にしたいものである。
 この開放感と眺めを大切にしている宿は、可能な限り露天風呂の目隠しや屋根を最小限にして海との一体感を演出するもてなしを忘れない。
 地方のいで湯に揺蕩いながらふと目を向ければ見渡す限りの水平線、永遠に続く青い空、さらには上空に拡がる星を散りばめた輝く夜空……このような絶景に恵まれるとは、何とも贅沢な話しではないか。

より風情を高める「独創的な浴槽」

        

 海が見える露天風呂を持つ宿は、浴槽に趣向を凝らしている所も少なくない。
 例えば船形浴槽や木造りの桶型、海と空をイメージした配色など、より地の利を活かし風情を高める工夫が成されているのだ。
 それぞれ宿のオリジナリティが発揮されているので、家族や友人と一緒に浸かれば会話も弾んで愉しいひとときを過ごせるだろう。

海が見える絶景露天風呂のご紹介

 ここまで読んでいただき、今まで「海は、ただただ青い」と思っていた読者の皆さんも、海はかように多彩な表情を魅せることがお判りいただけたと思う。
 そしてその旅情を一層高めてくれるのは宿の心憎い細かい配慮だということも。
 これからご紹介する海が見える露天風呂をチェックいただき、より出逢いたいと思う絶景をぜひ見定めて欲しい。それは自分にとって心身を浄化してくれる、一生忘れられない体感になるに違いないからだ。

大阪屋 ひいなの湯 「露天舟風呂」の写真

大阪屋 ひいなの湯 「露天舟風呂」

        

 和歌山県は最西端に位置し、万葉の時代から風光明媚と謳われた加太湾と紀淡海峡に面した老舗旅館で出逢えるのは、宿の最上階に備わる浴場の海が見える露天風呂から大パノラマの絶景。
 全面ガラス張りの大浴場や和情緒漂う露天岩風呂と、どれも海の薫りと波の音を堪能できるが、一番のお勧めは気持ちの良い潮風を全身に感じながら浸かれる個性的な船形の露天風呂。
 淡路島を始め彼方には四国まで見渡せ、特に地平線を茜色に染め上げ沈みゆく夕陽の景観は賞賛に値し、船に揺られる気分で漁師町ならではの素朴な風情に心から癒されるだろう。

炭平 「空の雫」の写真

炭平 「空の雫」

        

 創業明治元年、丹後の最も古い旅館としておもてなしの心を今に継いでいる炭平は、雄大な表情を魅せる日本海を臨む里山の麓に抱かれた純和風旅館。
 ここを訪れたなら、四季折々の自然美を肌で感じることができる海の見える露天風呂「空の雫」は絶対に押さえるべき露天風呂であろう。
 春の桜や夏の気持ちの良い潮騒も心地良いだろうが、日本海ならやはり冬の激しい大海原のうねりをお勧めしたい。
 その凍てつく力強さは圧巻で、いで湯の温もりとともに客人の記憶にいつまでも残る波見風呂となるに違いない。

漁り火の宿シーサイド観潮 「大浴場」の写真

漁り火の宿シーサイド観潮 「大浴場」

        

 百亜の街並みが美しい和歌山の港町、雑賀崎の高台に佇む一軒宿はその地の恩恵を見事に受けた贅沢なロケーションが魅力と言えよう。
 フロントロビーからも、一服できるティーラウンジからも海が見える造りで、見渡せば彼方に淡路島の儚影を臨む絶景だ。
 美肌も期待できるというお待ちかねの紀州のいで湯は、ぜひ開放的な大浴場で。
 特に夏の夜は宿名の通り、月灯りのもと大海原に浮かぶ漁船の漁り火が幻想的な闇を演出してくれるだろう。

百楽荘 「露天壺風呂」の写真

百楽荘 「露天壺風呂」

        

 昭和9年創業、奥能登屈指の老舗宿百楽荘は九十九湾に突き出た半島に佇む“百の楽しみ”をおもてなしの心とする和風旅館。
 ここには全国でも唯一とされる、九十九湾沖で汲み上げた海洋深層水の温泉が備わり美肌や保湿も叶えるという。
 そのリラックスの湯はユニークな洞窟風呂で満喫できるが、温かな湯煙の向うは「露天壺風呂」のある展望テラスになっており、滔々たる九十九湾の眺望は言葉にできないほどの素晴らしさ。
 海が見える露天風呂にゆっくり浸かれば日頃の疲れも一気に消え去るはずだ。

竹林庵みずの 「大浴場 楠・風」の写真

竹林庵みずの 「大浴場 楠・風」

        

 関東の奥座敷と称される熱海に建つ竹林庵みずのは、個性溢れる古材を丹念に磨き上げて宿に蘇らせる、古民家への想いを大切にした名宿。
 宿内の梁の木組みの雅さには目を見張るものがあるが、同じほど感嘆するのは内湯を備えた大浴場の広々としたテラスに置かれた海の見える露天風呂(楠:女性、風:男性)。
 目前に拡がるのは豊かな緑薫る自然美と紺碧の穏やかな相模湾のコントラストが織り成す絶景で、のびのびした気持ちで湯を満喫できる。

和味の宿 角上楼 「かすみの湯」の写真

和味の宿 角上楼 「かすみの湯」

        

 愛知県は渥美半島にひっそり佇む角上楼は、昭和元年に料亭として建てられた純和風の宿。
 どこかレトロな空間はそのまま浴場にも活かされ、男性大浴場「かすみの湯」にほんのり灯された行燈が懐かしさを漂わせている。
 天竜川の伏流水を沸かした湯が並々と溢れるこの浴場は、内湯との仕切りを開け放つと露天風呂となり、さらに開放感が味わえるという造り。
 敷地の高台にあるため、旅情あふれる牧歌的な福江の町並みとその彼方に三河湾の美しい海が見える絶景を体感できる。

かつうら御苑 「露天風呂」の写真

かつうら御苑 「露天風呂」

        

 紀伊半島南部、いにしえの古道 熊野街道が走る先にある那智勝浦町に厳かな佇まいを成すかつうら御苑は、那智勝浦温泉の中でも間近に海が見える絶好の立地条件。
 雄大な熊野灘の紺碧輝く海景を愉しむなら、ぜひ開放感抜群の海の見える露天風呂へ向かおう。
 梁組みがしっかりした東屋風の屋根を設え大小の岩を配した造りは溢れるばかりの和情緒で、彼方に那智山や那智の滝を臨む景観はまさに絶景。
 また、朝陽にきらめく海も一見の価値ありと評判なので、ぜひ早起きして確かめていただきたい。

旅荘 海の蝶 「千鳥の湯」の写真

旅荘 海の蝶 「千鳥の湯」

        

 大小の自然豊かな島々や入り江が点在し、美しい景観を残す名所も数多くある風光明媚な伊勢志摩の国立公園内に建つ海の蝶はエントランスから客室全てオーシャンビュー、その景観は伊勢随一とも称されるほど。
 浴場には伏流水をろ過した癒し成分たっぷりの湯が贅沢に溢れ、豊富なミネラルを含んだなめらかな湯は肌がすべすべに。
 大浴場内の海の見える露天風呂「湯千鳥の湯」は東屋風の屋根と清々しい緑に囲まれた風流な設えで、目前には伊勢湾の滔々たる海原の大パノラマが拡がり抜群の開放感だ。

源氏香 「雲上露天風呂」の写真

源氏香 「雲上露天風呂」

        

 愛知県は知多半島の南端に位置し、日本初と称して日本古来の香りをおもてなしの心に掲げる和風旅苑。
 館内の随所でお香がたかれ源氏物語をテーマにした客室を設えるなど、女性客の心を掴む多彩な趣向が魅力だ。
 自慢の「雲上露天風呂」は風情漂う木枠造りの浴槽に溢れんばかりのいで湯を湛え、浸かれば穏やかな知多の大自然と目も眩む美しい伊勢湾の絶景を独り占めできる。

MANPA RESORT 「萬葉の湯」の写真

MANPA RESORT 「萬葉の湯」

        

 和歌山市に位置する和歌浦温泉は奈良時代から遊覧を目的に行幸が始まったとされるほど、その美しい風景は太古から愛されてきた景勝地で万葉歌人にもうたわれたほど。
 その和歌浦海岸の懐に抱かれた温泉旅館MANPA RESORTの自慢は、滔々と湛えた碧いの輝きが客人を魅了する風光明媚な和歌浦湾を一望できる海が見える露天風呂「萬葉の湯」。
 鮮やかな輝きを放つ昼の海も雄大だが、夕景は地元民にもこよなく愛される絶景と評判が高いのでぜひご覧あれ。

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