貸切風呂のある宿で温泉独り占め!

貸切風呂のある宿で温泉独り占め!

 温泉での寛ぎは「日本人で良かった」としみじみ思う瞬間。
 思い立ったら1人で温泉旅行というのも贅沢なものだが、大切な人と素敵な旅館で同じ時を過ごせば一生の思い出になるだろう。
 せっかく大切な人と行くのだから、温泉の醍醐味である“お風呂”は誰にも邪魔されず、思い切りプライベート感を満喫したいと思うのは当然のこと。
 今回はそんな願いを満たす貸切風呂についてご紹介していこう。

貸切風呂の魅力について

カップルも家族も「広々使える」

        

 一般的に“貸切風呂”と表現される温泉には大きく分けて2種類ある。
 1つが大浴場などと同じように客室の外にある浴場を時間制で貸し切るもの。
 もう1つは露天風呂付き客室などと称されあらかじめ備え付けられているものだ。
 特にカップルで温泉旅館を訪れた場合、温泉には男女分かれて入らなければならないと一緒に来ている意味を感じられなくなることも多く、混浴では周囲の目も気になるところでこの貸切タイプが人気になっているのだ。
 2種類ともプライベート感は満喫できるが、備え付けで無い貸切風呂は比較的大きな浴槽の設えでカップルのみならず家族も水入らずで愉しめるという利点がある。

いつもの温泉旅行が「ちょっと豪華になる」

        

 貸切風呂がある温泉旅館は全国にあり、大概は時間制になっている。
 ただし使い勝手は各旅館によってだいぶ幅があり、たとえば貸切風呂前にある“使用中”の札が無ければ好きな時間に入って良いという自由な旅館もあるのだ。
 また、当日予約すれば露天風呂を始め10個以上の貸切風呂が全て無料で使用できるという何とも贅沢な配慮のところも。
 いつもの温泉旅行を少々豪華にしたいと思うなら、出かける前に自分なりの温泉の愉しみ方を見つけておくのがお勧めだ。

貸切風呂だけ「源泉かけ流し」の宿も

        

 ところで、温泉に来たなら大地の恵みをたっぷり含んだ源泉かけ流しの新鮮ないで湯にゆったり浸かりたいと思う人もいるだろうが、大浴場は違うのに貸切風呂だけ源泉かけ流しをうたう宿もある。
 これは、特に温泉シーズンの冬場は源泉の湯量が足りず大きな湯舟を満たすのは厳しいためそちらは循環ろ過式で対応し、小規模スペースのみかけ流し状態にしていると思われる。
 天然の源泉に全く手を加えず溢れんばかりに保つのはそれほど難しいのだが、こだわり派の読者は予約前にしっかり確認しておくと良いかもしれない。

一押しの貸切風呂をご紹介

 温泉旅館に来たのに大浴場1つしかない、というのはやはり物足りない。
 昨今はどの旅館も浴場に趣向を凝らしゆったりと湯浴みを愉しめるものだ。
 貸切風呂も同様で、宿自慢の四季折々に華やぐ名庭園を望めたり、露天風呂なら輝くばかりの星空を愛でながら揺蕩い、いっぽう完全バリアフリーで幅広い客層に対応する所もある。
 ここは思い切って貸切風呂のある温泉旅館を予約し、大切な人との絆を更に深めてみてはいかがだろうか。

百楽荘 貸切風呂「夕凪」の写真

百楽荘 貸切風呂「夕凪」

        

 日本百景にも選ばれた石川県にある風光明媚な九十九湾。
 その突き出た半島に佇む百楽荘は、昭和初期の創業で奥能登屈指の温泉宿と呼び声が高い。
 魅力は何といってもミネラルや窒素など無機栄養塩が豊富に含まれる九十九湾沖で汲み上げた海洋深層水をたっぷり注ぎ込んだ温泉だろう。
 中でも貸切風呂「夕凪」は、目前に拓ける紺碧の九十九湾と奥能登の豊かな深緑のコントラストがまぶしい絶景もさることながら、旅館デザイナー松葉啓氏がデザインした瀟洒な造りが嬉しくなる。
 せり出したテラスや柔らかな照明の洗い場にデザイナーの粋が感じられ、贅沢な気分で湯浴みを愉しむことができるだろう。

竹林庵みずの 貸切風呂「独泉」の写真

竹林庵みずの 貸切風呂「独泉」

        

 関東の奥座敷と称される熱海の先、海産物の逸品が揃う網代温泉に構えるのは“源泉かけ流しの宿”をうたう古民家造りの名宿。
 竹林庵みずのは1日100tの湯を湧出させる自家源泉を持ち、網代の新鮮な湯を溢れんばかりに湛えている。
 大浴場の手前に位置する貸切風呂「独泉」はしっかりした木縁と東屋風の屋根が和情緒を醸し出す素朴な設えで、湯に浸かれば日頃の疲れも一気に癒されてしまうだろう。
 シンプルな広めの湯舟なので子供連れで入っても十分のんびりできる。

源氏香 貸切風呂「薄雲」の写真

源氏香 貸切風呂「薄雲」」

        

 名古屋にある南知多温泉郷の歴史はまだ浅いが、美しい砂浜を持つ海水浴場が点在していることもあってリゾート地としてはすでに知られた存在だ。
 その南知多温泉郷の海岸通り沿いに建つ源氏香は、機能的かつ雅な風格と館内の随所に焚かれるお香がかぐわしい“薫りの宿”として人気が高い。
 地下1300mから汲み上げられ長寿の湯と呼ばれるいで湯をひとり占めできる貸切風呂「薄雲」は石造りの落ち着いた風合いで、どこか懐かしい南知多の原風景を愛でながらゆっくりと時に身を委ねることができる。

京YUNOHANA RESORT 翠泉 貸切露天風呂「楓庵」の写真

京YUNOHANA RESORT 翠泉 貸切露天風呂「楓庵」

        

 京の奥座敷と称され、四季折々の移ろいゆく自然美が旅人の心を和ませる湯の花温泉郷。
 そこにひっそりと暖簾を構える京 YUNOHANA RESORT 翠泉も、はんなりと静かな時をおもてなしの第一と重んじている。
 和の雅が漂う館内を進んで宿自慢の端正な庭園を渡った先にあらわれるのは、風流な岩造りの野趣溢れる露天の貸切風呂「楓庵」。
 風にそよぐ樹々の葉音まで耳にできる静寂な空間は、心のリフレッシュにぴったりだ。

西村屋ホテル招月庭 貸切露天風呂 ジャパニーズ「吟月」の写真

西村屋ホテル招月庭 貸切露天風呂 ジャパニーズ「吟月」

        

 城崎温泉は、シンボルの柳が風に揺れる山陰随一の温泉地。
 招月庭は、その地に150年の歴史を誇る老舗温泉旅館「西村屋本館」の別館として1995年に開業した。
 見るからに由緒正しき日本家屋の本館とは一線を画し、こちらは和の伝統を重んじながらも機能性を取り入れた新しいおもてなしがコンセプト。
 “森のプライベートスパ”と称された露天の貸切風呂はそれぞれに趣きが異なる3室を備え、ジャパニーズ「吟月」は木組みの天井と柱の直線的なシルエットが美しい和情緒溢れる貸切風呂となっている。
 湯上りに団欒に興じることができるリビングや岩盤風呂まで備え、複数人数で利用しても無理なく寛げるのがうれしい。

萬波 MANPA RESORT 日本スタイル 貸切風呂「蒼の湯」の写真

萬波 MANPA RESORT 日本スタイル 貸切風呂「蒼の湯

        

 万葉の時代から歌枕に詠まれたほど歴史が古い和歌の浦は、国の名勝にも指定されている風光明媚な景勝地。
 「萬波 MANPA RESORT 日本スタイル」は和歌山港にほど近い岬の突端に佇み、全客室から雄大な和歌浦湾の海原が見渡せる眺望が自慢の温泉宿だ。
 快適にリゾート気分を満喫できるようリニューアルを重ねた館内は和モダンでスタイリッシュ。
 “おしゃれタイプ”と称される貸切風呂「蒼の湯」は浴槽に張り巡らされたブルーチップタイルとLEDライトが幻想的な雰囲気を醸し出し、非日常的に温泉を愉しみたい若者層にお勧めしたい。

月光園 鴻朧館 貸切テーマ風呂「ワイン風呂」の写真

月光園 鴻朧館 貸切テーマ風呂「ワイン風呂」

        

 日本三古湯の一つとされる有馬温泉の地に構え、四季折々の表情で魅せる落葉山と清流滝川が織り成す自然美に抱かれた風光明媚な景観が自慢の温泉旅館。
 有馬温泉の中では数少ない100%源泉かけ流しをうたい、様々な趣向を凝らした浴場で湯の贅を堪能できる。
 中でも3つの異なったテーマを持つ貸切風呂は幅広い年代層から人気を博している目玉のおもてなし。
 芳醇なワインの薫りが辺りに立ち込め砂岩石造りがお洒落な「ワイン風呂」は、ワインそのものではなく入浴剤を用いているので子供も一緒に浸かることができる。

陶泉 御所坊 「離れの茶室付き湯殿 偲豊庵」

陶泉 御所坊 「離れの茶室付き湯殿 偲豊庵」

        

 1191年の創業以来、将軍足利義満や豊臣秀吉、そして純文学を代表する谷崎潤一郎から政治家の伊藤博文まで数々の偉人が御所坊ファンを語ってきた由緒ある旅館。
 落ち着いた木造建築の佇まいは、時代が流れても今未だ伝統と温もりを大切に重んじるおもてなしの心粋が感じられる。
 離れにある「偲豊庵」はその名の通り茶室が隣接される、まさに湯殿と呼ぶにふさわしい贅を尽くした造り。
 ほのかに灯る蝋燭の揺らぎに有馬をこよなく愛した秀吉に想いを馳せれば、その湯浴みは一生忘れられないものとなるはずだ。
※天楽タイプの客室にご宿泊の場合、チェックイン時にご予約頂けます。

いぶすき秀水園 「貸切湯浴み処 碧」の写真

いぶすき秀水園 「貸切湯浴み処 碧」

        

 指宿は九州薩摩半島の東南に位置し、南国情緒溢れる周辺の風景とは様変わりした純和風の設えに心がふっと和む温泉旅館。
 湯治場としても人気がある効能豊かな指宿のいで湯を源泉かけ流しでたっぷりと浸かることができる。
 専用のリビングを備えた貸切風呂は和風と洋風2種類用意され、行燈の柔らかな灯りに包まれる貸切風呂「碧」は、どっしりとした黒石造りの浴槽と目前に日本庭園風の坪庭を愛でる和風タイプ。
 しっとり落ち着いた空間でプライベートタイムを存分に満喫して欲しい。

仙郷楼 貸切露天風呂「金時の湯」の写真

仙郷楼 貸切露天風呂「金時の湯」

        

 創業明治3年の仙郷楼は、約1万5000坪の広大な敷地に本館含む4つの棟が隣接し箱根外輪山の眺望が素晴らしい老舗。
 仙石原温泉の湯元である大涌谷で古くから温泉の権利を有しており、新鮮ないで湯を惜しげもなく浴場に注ぐ源泉かけ流しの宿だ。
 シンプルな造りの「金時の湯」は、何といっても目前に拓ける箱根の大自然と外輪山の眺望が素晴らしい露天の貸切風呂。
 圧倒的な開放感の元、肌に吸い付くようになめらかな白濁の硫黄泉に身を委ねれば肌は見違えるように潤っていく。